デール・カーネギー(創元社)
山口博(訳)
★★★★★ 【初級】
価格:¥1,575
経営学で人間関係論というと、一般的には
メイヨーやレスリスバーガーの「ホーソン実験」が思い浮かびますが、ここでは個人の立場で「人間関係を円滑にするために役立つ書籍」をご紹介します。
「人間関係」について書かれた著書の中で、これほど世界的に有名なものはないでしょう。初版以来70年、改定後20年以上経過しても、まったく古さを感じさせません。逆に、人間関係が希薄になりつつある現代こそ、この本の重要性が増したといえるかもしれません。正に人間関係の原則を説いた名著です。
私は17〜18歳の頃、アメリカ帰りのビジネスマンに本書『人を動かす』を薦められました。彼は高卒で都銀に入社(入行)後、社費留学で米国に渡りコンピュータ関連の学位を取った努力家です。当時の私が、自分より年上の人たちを取りまとめる立場で苦労していたのを見かねて、この本を紹介してくれました。
本書『人を動かす』を読んで以来、私はすっかり「丸く」なりました。それまで正論を押し通そうとしていたのを改め、相手の立場を尊重しながら「指示」ではなく「依頼」するようになりました。相手を理解しようと努めているうちに、次第に相手も私の立場を理解してくれるようになりました。正に「人間関係は鏡」です。おかげで、敵をつくることがあまりなくなり、職場のチームワークもグッと良くなりました。このように、二十前の若僧にも大きな効果をもたらしてくれた、とても実用的な本なのです。
原題は、『
How to win friends and influence people 』とありますが、決して人心操作術のような底の浅いものではなく、深い人間洞察に基づいています。豊富な実例を交えながら、人間関係の基本原則を37ほどにまとめています。もし、まだお読みでない方がいらしたら、ぜひ読んでみてください。無条件でお薦めします。
可能ならば、できるだけ若いうちに読むことをお勧めします。また、管理者として部下をお持ちの方にも、家族関係でお悩みの方にもお薦めします。この書を読み、他人の気持ちを思いやることを心掛ければ、人間関係で悩むことは確実に少なくなるのではないでしょうか。座右に置いて、適宜読み返したい名著です。
【抜き書きノート】
... デール・カーネギー 『人を動かす』 より
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ポール・ハーヴェーはラジオのレポーターとして知られているが、『後日物語』と題した番組の中で、心からの賞賛で一人の人間の人生が変る話をしていた。何年も前、デトロイトのある学校の女先生が、授業中に逃げた実験用のねずみを、スティーヴィー・モリスという少年に頼んで、探し出してもらった。この先生がスティーヴィーにそれを頼んだのは、彼が、目は不自由だが、そのかわりに、すばらしく鋭敏な耳を天から与えられていることを知っていたからである。すばらしい耳の持主だと認められたのは、スティーヴィーとしては、生まれて初めてのことだった。スティービーの言によれば、実にその時---自分の持つ能力を先生が認めてくれたその時に、新しい人生が始まった。それ以来、彼は、天から与えられたすばらしい聴力を生かして、ついには「スティーヴィー・ワンダー」の名で、1970年代の有数のポップ・シンガー、ソングライターとなったのである。
... デール・カーネギー 『人を動かす』 より
【目次】
PART1 人を動かす3原則
1 盗人にも五分の理を認める
2 重要感を持たせる
3 人の立場に身を置く
PART2 人に好かれる6原則
1 誠実な関心を寄せる
2 笑顔を忘れない
3 名前を覚える
4 聞き手にまわる
5 関心のありかを見ぬく
6 心からほめる
PART3 人を説得する12原則
1 議論をさける
2 誤りを指摘しない
3 誤りを認める
4 おだやかに話す
5 “イエス”と答えられる問題を選ぶ
6 しやべらせる
7 思いつかせる
8 人の身になる
9 同情を持つ
10 美しい心情に呼びかける
11 演出を考える
12 対抗意識を刺激する
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PART4 人を変える9原則
1 まずほめる
2 遠まわしに注意を与える
3 自分のあやまちを話す
4 命令をしない
5 顔をつぶさない
6 わずかなことでもほめる
7 期待をかける
8 激励する
9 喜んで協力させる
付録 幸福な家庭をつくる7原則
l 口やかましくいわない
2 長所を認める
3 あら探しをしない
4 ほめる
5 ささやかな心づくしを怠らない
6 礼儀を守る
7 正しい性の知識を持つ
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