デール・カーネギー (ダイヤモンド社)
山本悠紀子(監修)
田中融二(訳)
★★★★★ 【初級】
価格:¥1,680
本場米国のデール・カーネギー・コース(社会人向けの自己啓発教室)で中心的なテキストとして長く使われてきたものです。
本書は「何としても話し方を上達させたい」という意欲や問題意識をお持ちの方が読まれると、大きな力になってくれます。「そうなのか!」「なるほど!」という発見の連続でしょう。しかし、ただ読むだけでは、この本の持つ力の半分しか発揮できません。実際に、しかも頻繁に「実施訓練」をすることで、飛躍的な効果が現われます。
もうずっと昔の話になりますが、話し方やスピーチに関する本を読み漁った時期がありました。色々読んだ本の中で、やはり本書「カーネギー 心を動かす話し方」は抜きんでていると思います。当時の私にとって、顧客との折衝やプレゼンテーションに大いに役立ちました。
その後、時間的に少し余裕のできた時期に、都内の「日本話し方センター」という話し方の教室で3ヶ月の講座を受講したことがあります。講師に与えられたテーマを基に、毎週1回必ずクラスの全員がスピーチを行なうというものです。アフター5の夜間講座には、向上心を持った社会人が集まり、毎回楽しい時間となりました。しかし、何といってもいちばん良かったのは、「毎週必ず、みんなの前で実施訓練ができる」ということです。これを十数回繰返すうちに、みんながそれぞれ、堂々とした態度で、ユーモアを交えた「聴かせる」話ができるようになりました。はじめは自己紹介すらまともに出来なかった人が、最終回には見違えるようなスピーチを披露し、皆を驚かせたりもしました。私は、投票で(どういうわけか)そのクラスの代表に選ばれて、全クラス合同のスピーチコンテストに出場しました。500人以上いる聴衆の前でも楽しく話すことができ、出場者10人(くらい)の中で第2席の表彰を受けました。私のような「普通の人」でも、キチンとしたトレーニングで拍手を浴びるようなお話しができるようになるという好例です。
繰り返しますが、表彰は私の能力のせいではありません。「カーネギー 心を動かす話し方」と「実地訓練」のおかげです。誰でも、能力は持っています。要は、それを発揮する術(すべ)を知っているかどうか、ということです。知らなければ、それを求めれば良いわけです。
ちなみに、教室で配布されるテキストも分かりやすくて良かったのですが、本書「カーネギー 心を動かす話し方」にはかないません。この本を教科書にして実地訓練を繰返すという方法で、どこへ出ても恥ずかしくない力を付けることができるでしょう。後は、「人間の中味」次第、ということになります(笑)。
ちなみに、同著者には「話し方入門 新装版(創元社)」という類似した本がありますが、本書(ダイヤモンド社版)の方が数段良い内容です。
【抜き書きノート】
... D.カーネギー 『カーネギー 心を動かす話し方』 より
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... デール・カーネギー 『カーネギー 心を動かす話し方』 より
【目次】
第1部 効果的に話すための基本
第1章 基本のスキルを身につける
1 他者から学ぶ心を開く
2 話すことの目標をしっかり見据える
3 かならず成功すると自己に言い聞かせる
4 あらゆる機会をとらえて練習する
第2章 自信を育てる
1 人前で話す恐怖についての事実を知っておく
2 適切な準備を整える
3 かならず成功すると自己に言い聞かせる
4 自信を持って振る舞う
第3章 簡単で効果的な話し方
1 経験や学びを通して得たものについて話す
2 みずからが心をかきたてられる主題を選ぶ
3 聴衆にぜひ聞いてもらいたい話をする
第2部 話・話し手・聞き手
第4章 聴衆の関心を引く話
1 話題の範囲内で話す
2 余力を蓄える
3 実例をたくさん使う
4 映像が浮かぶような具体的な言葉を使う
第5章 生き生きした話し手となる
1 真剣に考えていることを主題に選ぶ
2 感情を再現する
3 真剣に振る舞う
第6章 話を聞き手と分かち合う
1 聴衆が関心を持つ話題を織り込む
2 正直で誠意のある評価をする
3 聴衆とあなたの共通点をはっきりさせる
4 聴衆を話のパートナーにする
5 調子に乗らない
第3部 準備の大切な話と即興の話
第7章 聞き手に行動をおこさせる短い話
1 あなたの人生における出来事を実例にする
2 聴衆にしてほしい行動を要点として述べる
3 聴衆が期待している理由や利益を示す
第8章 知識や情報を提供する話
1 持ち時間に合わせて話題を限定する
2 考えを順序よく整える
3 要点に番号をふって列挙する
4 よく知られているものに喩える
5 視覚的な補助手段を用いる
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第9章 心をつかむ話
1 信頼される人格を築く
2 受け入れムードを醸成する
3 熱意を聞き手に伝える
4 聴衆に敬意と愛情を示す
5 友だちに話しかけるように始める
第10章 聞き手を楽しませる即興の話
1 即興の話を練習する
2 心の準備をしておく
3 すぐ実例を使って話し始める
4 生き生きと力強く話す
5 「その場そのとき」の鉄則に徹する
6 即席でなく即興の話をする
第4部 意思伝達の技
第11章 効果的な話し方の秘訣
1 自意識過剰の敵を打ち破る
2 人まねをせず、自分自身であれ
3 聴衆と話し合う
4 話に自己を投入する
5 声を力強く柔軟にする訓練をつむ
第5部 さまざまな話し方への挑戦
第12章 紹介・授賞・受賞のスピーチ
1 話すべきことを完全に準備する
2 T‐I‐S公式に従う
3 熱意を込める
4 誠実を旨とする
5 授賞のスピーチを心得る
6 受賞のスピーチを心得る
第13章 組み立てられた長い話
1 即座に関心を引きつける
2 聴衆に悪意を持たれないようにする
3 主要な考えを補う
4 行動を呼びかける
第14章 日常会話
1 日常会話に具体的な細部描写を用いる
2 仕事で効果的な話術を活用する
3 公衆の面前で話す機会を捜す
4 ねばり強くがんばる
5 前方にある成功を確信し続ける
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苅谷剛彦(講談社プラスアルファ文庫)
★★★★★ 【初級】
価格:¥924
3万人の大学生に選ばれた「ベストティーチャーズ」のひとり、苅谷剛彦氏の著作です。
物事の論理の筋道を追う力、自分の論理をきちんと組立てる力、常識や詭弁に惑わされず様々な視点から考える力をつけるための具体的方法を解説しています。(読みっぱなしにせず)熟読して実践することで、様々な経営課題を柔軟に考えることができるようになるでしょう。
東京大学大学院での授業がベースになっていますが、充分わかりやすく書かれています。
【抜き書きノート】
... 苅谷剛彦 『知的複眼思考法』 より
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私が提唱してきた「複眼的思考法」とは、ものごとを一面的にとらえるのではなく、その複雑さを複数の視点から把握することを主眼にしています。そして、そうした視点に立って、「常識的」なものの見かたにとどまらない、言い換えれば、思考停止に陥らないで、考えることの継続・連鎖を生み出すような、思考の運動を呼び起こそうというのです。
◆
ものごとの二面性(多様性)に注目する・・・
1:目の前の問題(事象)は、どのような要因(要素)の複合かを考える(=分解)。
2:それぞれの要因の間にはどのような関係があるのかを考える(=相互作用の抽出)。
3:そうした要因の複合の中で、問題としていることがらがどのような位置を占めているのかを考える(=全体の文脈への位置づけ)。
... 苅谷剛彦 『知的複眼思考法』 より
【目次】
序章 知的複眼思考法とは何か
1 知的複眼思考への招待
2 「常識」にしばられたものの見かた
3 知ることと考えること
第1章 創造的読書で思考力を鍛える
1 著者の立場、読者の立場
2 知識の受容から知識の創造へ
第2章 考えるための作文技法
1 論理的に文章を書く
2 批判的に書く
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第3章 問いの立てかたと展開のしかた
- 考える筋道としての〈問い〉
1 問いを立てる
2 〈なぜ〉という問いからの展開
3 概念レベルで考える
第4章 複眼思考を身につける
1 関係論的なものの見かた
2 逆説の発見
3 〈問題を問うこと〉を問う
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