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Books : 【 戦略論 】のオススメ書籍を「書評/レビュー」で紹介


 
  • 私が過去に読んだ「マネジメント・経営関連書籍」の中から、【オススメ書籍】をいくつかご紹介します。
  • 私自身の理解力の低さ・文章力の無さは棚に上げていますので、「何と拙い書評/レビューだろう」と笑われるかもしれません(涙)。
  • オマケとして、オススメ度★印...最高5個)・難易度初級...中級...上級)・抜き書きノート抜粋)を付けました。
  • 書籍タイトル&画像をクリックすると、新たにアマゾン(Amazon.co.jp)の画面が開きます。そこに、多くの読者が書いた様々な「書評」が載っています。ぜひ、この Amazon の書評を読んでみてください。バラエティーに富んだ多様な視点が、とても参考になります。
  • 経営の先達が残した知恵と経験の数々・・・。その「入り口」をじっくりと覗いてみてください・・・。

 ◆ 戦略論

居眠り優位の戦略?

競争の戦略  ←[Amazon レビュー]


マイケル・ポーター(ダイヤモンド社)
土岐坤・中辻萬治・服部照夫(訳)
★★★★★ 【中級】【上級】
価格:¥5,913
 「ポーター」の名を一躍世界に知らしめた名著。競争戦略論の第一人者による定番中の定番です。

 業界構造を分析する「5つの競争要因」理論、自社の取るべき「3つの基本戦略(差別化・コストリーダーシップ・集中)」など、競合に伍して生き残るための基本的な考え方が語られます。緻密な考察は圧巻です。

 ちなみに、2010年にNHKのTV番組で「ワタミ」の渡辺美樹氏が自身の経営バイブルとして紹介したところ、本書『競争の戦略』の売上部数が急増したようです。
  • ポーターは産業組織論(ミクロ経済学)が専門で、その理論がベースとなっています。前もって経済学の復習をしておくと、本書の理解が容易になるでしょう。
【抜き書きノート】 ... マイケル・ポーター『 競争の戦略』 より
多数乱戦業界(フラグメンテッド・インダストリー)の競争戦略
 まずとり上げるのは、企業が多数しのぎを削っている業界であって、これを多数乱戦業界と呼んでいる。どの企業もめぼしいマーケット・シェアがとれず、業界の生産量を大きく左右できない。この業界にはとても多くの中小企業がひしめいているものだが、多くは個人企業である。多数乱戦業界を正確にあらわす数字など一つもないが、そんなものが戦略問題を考える際には必要にもなるまい。しかし忘れてならないのは、この種の業界が他に類を見ない競争環境であるのは、業界を牛耳るほど力のあるマーケット・リーダーがいないからだ、ということである。
 多数乱戦業界は、アメリカだろうと、どこかよその国だろうと、多くの産業に見られるが、共通している分野といえば、次のようなところである。
 ・サービス          ・小売り      ・卸売り
 ・木材や金属の加工      ・農産物      ・公告制作

多数乱戦の原因は何か
 ◇参入障壁が低い・・・ほとんどすべての多数乱戦業界には、参入障壁といえるほどのものがない。そうでもなければ、これほど多数の小企業がひしめきあうはずがない。参入障壁が低いから多数乱戦になるとはいっても、それだけでは十分な説明とはいえない。多数乱戦には、まずまちがいなくこれ以外の原因が一つあるいは二つ以上からんでいる。
 ◇規模の経済性、あるいはエクスペリエンス曲線がきかない・・・製造、マーケティング、流通、研究など業種は何であれ、たいていの多数乱戦業界では、経営の主要な側面には規模の経済性や習熟曲線(経験曲線)がほとんど作用しない、という特徴がある。規模の経済性やエクスペリエンスの累積によるコスト低下が見られないのは、単純な加工や組立作業であったり、単なる在庫商売であったり(電子部品の卸売り)、もともと労働集約的内容であったり(保安警備)、あるいは人手によるサービスに頼るとか、機械化やルーティン化がとても無理なものであったりするからである。
 ◇溢れるばかりの創造性が売りものという場合、例外はあるにしても、きわめて大きな企業では、想像力豊かな人材に活発な創作活動を続けさせるのはまず無理である。だから、広告制作やインテリア・デザインには業界を圧するほどの企業はない。
 ◇作業現場に密着して管理監督しなければ成功がおぼつかない場合、小企業は強い。一部の業種、とりわけナイトクラブや食堂などサービス業では、現場につきっきりで、こまごまとした指示を直接与える必要がある。こういう業種には、比較的小さな店で、オーナー経営者が目を光らせているようなところがいちばんむいていて、他人まかせの経営ではうまくいかない、というのが通説になっている。
 ◇人手によるサービスが事業の決め手なら、小企業のほうが効率的である。人手によるサービスの質が高く、顧客にかゆいところに手が届く、行き届いたサービスだと感じてもらえるのは小企業に多く、規模がある限度を越えると、だんだんと低下する傾向がある。これが、美容院やコンサルタントの業界が多数乱戦になっている理由である。
多数乱戦構造に対処する方法
 多数乱戦は、多くの場合、いかんともしがたい経済原則が働くから起こる。競争相手が無数にあるだけでなく、一般に仕入先にも買い手にも弱い立場に立たされてしまうのも特徴である。だから、利益といえるほどのものは得られない。こういう状況では、【戦略によって自社の地位をどう変えてゆくか】が何にもまして重要な意味を持ってくる。戦略の課題は、たとえシェアはごくつつましくとも、この業界で最も業績のよい企業に名を連ね、多数乱戦業界の勝者となることである。
同じ多数乱戦業界とはいっても、仔細に見ればどの業界もそれぞれ異なっているのだから、どこにも向くうまい競争の仕方などあるわけがない。しかし、多数乱戦の業界構造に対処するには、それなりの戦略の考え方がいくつかあるので、どこか特定の業界の状況について検討を進める際にはまずこれを当ってみるべきである。それは、とりもなおさず、2章で説明した、低コスト、製品差別化、集中、の三つの基本戦略を多数乱戦業界と言う特異な状況に当てはめ、検討することである。どの方法も、めざすところは、独特の性質をもったこの業界の競争に最もうまく合うよう自社の戦略姿勢を改めるか、あるいはこの業界ではまず避けられない熾烈な競争をうまくかいくぐるか、のいずれかである。
付加価値を高める・・・多数乱戦業界の多くは、その製品やサービスが特徴のない汎用品で、差別化しにくいものである。例えば、多くの流通業者がとりそろえている商品の種類は、競争相手と全く同じではないとしても、とても似かよっている。こういう場合、効果のあがる戦略は、事業の付加価値を増すことである。例えば、売る時に客の喜ぶサービスをもっと付け加えるとか、加工の手を伸ばし、一部最終加工まで手掛けるとか(所要サイズに切断したり穴をあけたり)、部品の中間組立てや最終組立てをしてから顧客へ販売するとか、である。ありきたりの製品やサービスでは、差別化を進めてマージンを増やすなどまず無理なのだが、このように手を広げるとそれも可能になる。
製品種類や製品セグメントを専門化する・・・一つの製品にも無数の種類があって、これが多数乱戦業界の原因になっているか、原因ではないとしてもこれに悩まされている場合、業界の平均を上回る業績をあげるには、一製品を無理にでも特定種類に絞って専門化するのが効果のあがる戦略である。これは、2章に述べた集中戦略の一種である。この戦略をとると、購買量がまとまり、供給業者にとっても、かなりの量にのぼるから、仕入れの交渉にもある程度強い姿勢がとれるようになる。また、特定の製品分野の専門家だからこそ思い浮かぶ、優れた意見やイメージを活かして、製品差別化を押し進め、顧客をつかむこともできる。集中戦略によってその製品分野に関する情報が増えるので、顧客に役立つ知識を与えたり、いろいろなサービスを提供する体制を整えるため、資金を投じる意味も出てくる。しかし、この専門化戦略の代償に将来の成長が多少制約されるのはやむをえない。
顧客のタイプで専門化する・・・多数乱戦という状況そのものが原因で激しい競争が演じられている場合、顧客を特定のタイプだけに絞って利益をあげるというやり方もある。絞るマトは、年間購入量が少ないとか、企業規模そのものが小さいとかで、購買の際、高圧的態度に出ない顧客がよかろう。あるいは、価格にまったく敏感でない顧客とか、製品やサービスに付け加えた付加価値をいちばん欲しがっている顧客に絞るという手もある。特定製品に専門化する場合と同様、顧客を絞れば利益率は高くなるが、その代わり企業成長の見込みは少なくなる。
 手順1:業界の構造はどうか。競争業者はそれぞれどういう位置にいるか。
 手順2:多数乱戦の原因は何か。
 手順3:多数乱戦状態を変えられるか。その方法は。
 手順4:変えて利益が得られるか。その場合、自社はどういう位置にいなければならないか。
 手順5:多数乱戦が避けられない場合、どう対処するのが最善か。
[手順1]は、業界と競争相手の分析を完全に行って、その業界で何が競争力を生みだすもととなっているか、業界内部の構造はどうか、主だった競争相手は業界のどういう位置を占めているか、をはっきりとさせることである。
 この分析を頭に入れたうえで、[手順2]では、その業界が多数乱戦となっている原因をあきらかにする。この際、忘れてならないのは、原因は落ちなくみな書き出し、それらが業界の経済状態とどうつながっているか、明確にしておくことである。前にも述べたことだが、もし経済的根拠もなく多数乱戦になっているとわかれば、これは重要な結論を得たわけである。
 [手順3]では、多数乱戦になっている原因一つ一つに検討を加えるが、この際、手順1で行なった業界と競争相手の分析とも関連させて考えるのである。イノベーションや戦略の転換で取り除ける原因はあるか、経営資源や今までにない新しい見方さえ注ぎ込めばそれで多数乱戦は変るのか、業界の動向しだいで直接・間接変化する原因は何であるか、というぐあいである。
 [手順4]は、以上の質問に一つでも「イエス」と答えた場合である。もし多数乱戦を変えられるなら、将来の業界の状況を想定し、何としても手に入れたいほどの利益が出るか検討しなければならない。この答えを出すには、業界の整理統合が行われたあとの新しい秩序を予想し、それをもう一度状況分析してみることである。整理統合されたあとの業界がまちがいなく高利益を約束するものなら、最後に投げかける質問はこうである。業界の整理統合に乗じて優位に立つには、どういう位置を占めるのが最も有利で安全か。
 手順3の分析で、多数乱戦状態は変わる望みがないとの結論になれば、[手順5]でその状態に最もうまく対処する方法を選ぶことになる。ここでは、先に述べたいろいろな方法だけではなく、自社の経営資源や経営技能を考えた上で、今問題となっている業界に適したその他の方法も検討しなければならない。
 これは一連の分析手順となっていて、定期的にくり返し実施すべきものだが、それ以外に多数乱戦業界を分析する際や、この業界で競争する際に、何が欠かせないデータなのかということにも目を向けさせる効果もある。多数乱戦の原因、イノベーションがそれにどう影響するかの予測、業界のどういう動向によってそれは変わるか、こうしたことが、環境をつぶさに調べ、技術を予測して手に入れたい最もたいせつなものなのである。
... マイケル・ポーター『 競争の戦略』 より

【目次】
1. 競争戦略のための分析技法
 1 業界の構造分析法
 2 競争の基本戦略
 3 競争業者分析のフレームワーク
 4 マーケット・シグナル
 5 競争行動
 6 買い手と供給業者に対する戦略
 7 業界内部の構造分析
 8 業界の進展・変化
2. 業界環境のタイプ別競争戦略
 9 多数乱戦業界の競争戦略
 10 先端業界の競争戦略
 11 成熟期へ移行する業界の競争戦略
 12 衰退業界の競争戦略
 13 グローバル業界の競争戦略
3. 戦略デシジョンのタイプ
 14 垂直統合の戦略的分析
 15 キャパシティ拡大戦略
 16 新事業への参入戦略



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競争優位の戦略 - いかに高業績を持続させるか  ←[Amazon レビュー]


マイケル・ポーター(ダイヤモンド社)
土岐坤(訳)
★★★★★ 【中級】【上級】
価格:¥8,190
 「競争の戦略」に続くポーターの名著です。競争戦略を学ぶのなら座右に置いておきたい1冊。

 自社内の機能をプロセスの鎖と捉えて差別化を検討する「バリュー・チェーン(価値連鎖)」の概念など有用な枠組みが紹介されています。読み返すたびに新たな発見があり、企業の具体的なアクションを考える際にも多くの気づきを与えてくれます。

【抜き書きノート】 ... マイケル・ポーター 『競争優位の戦略』 より

... マイケル・ポーター 『競争優位の戦略』 より

【目次】
 1章 競争戦略―その中心概念
1. 競争優位の原理
 2章 価値連鎖と競争優位
 3章 コスト優位のつくり方
 4章 差別化の基本的考え方
 5章 技術と競争優位
 6章 競争相手の選び方
2. 業界内部の競争分野をどう決めるか
 7章 業界細分化と競争優位
 8章 代替に対する戦略
3. 企業戦略と競争優位
 9章 事業単位間の相互関係
 10章 水平戦略の効用
 11章 相互関係の活用
 12章 補完製品と競争優位
4. 攻撃と防衛の競争戦略
 13章 業界シナリオと不確実性下の競争戦略
 14章 防衛戦略
 15章 業界リーダーへの攻撃戦略


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戦略プロフェッショナル - シェア逆転の企業変革ドラマ  ←[Amazon レビュー]


三枝匡(日経ビジネス人文庫)
★★★★★ 【初級】
価格:¥680
 ベンチャー企業の役員に抜擢された青年が、「戦略」をキーワードに事業部立直しに奔走する姿を描いた企業小説です。

 元々、経営者の研修向けに作られた教材を小説仕立てに編集したものです。とにかく面白いですよ。著者である三枝匡氏の実体験を基にしていて、臨場感に溢れています。そして、いつの間にか戦略論の基本に馴染んでしまう。さらに言うなら、「戦略」という武器を持つと、それが現場でどのような切れ味を発揮するのか疑似体験できる ── というメリットもあるでしょう。

 三枝匡氏はボストン・コンサルティング・グループを経て、3つの会社の再建にかかわった経営コンサルタントです。その後、ユニークな経営で知られる機械部品の専門商社ミスミに社長として招かれます。著書そのままに大胆な機構改革によってミスミを甦らせ、急成長させたという経歴の持ち主です。
 面白くて勉強になる、とにかくオススメの1冊です。

【抜き書きノート】 ... 三枝匡 『戦略プロフェッショナル』 より
事業戦略を成功させるには、現在業界で当たり前になっている競争のルールに穴をあけなければならない。つまり事業に成功する人は、自分で新しい競争のルールを創り出していく人である。今市場で行われている競争のルール(業界の「常識」)にのっとってやっているだけなら、二位の企業は永遠に二位、三位の企業は永遠に三位のままである。
局地戦争に持ち込むべきである。「絞り」、経営戦略論で「セグメンテーション」と呼ぶ。ビジネスはどんな小さなセグメントでもいいから、その分野でナンバーワンになるのが勝利のコツである。
「プロダクト・ポートフォリオ理論」により、それまで経営者が頭の中でバラバラに考え、ほとんど勘でしか関連づけることのできなかった重要な経営要素が、ひとつのチャートの上で鮮明に結合されたのだ。マーケットシェアの価値、事業のライフサイクル、キャッシュフロー、コストの動き、価格政策、多角化戦略や撤退戦略、・・・・・・そういった複雑な戦略課題がビジュアルなチャートでたちどころに整理されてしまうのだから、説明を聞いている経営者たちは目をランランと輝かせたのである。
もともと企業戦略論は、現実を「単純化」して問題の核心に迫るのが役割である。優れた戦略論はしがらみなどお構いなしに、単刀直入に問題の本質に切り込む。競争に勝つのか負けるのか、戦略論の目的はそこにしかないからである。
日本のビジネスマンの多くは、たとえ戦略理論を勉強したことがあってもなくても、その実践的価値をほとんど知らない。会社の現場レベルで、どれほど有効に使えるのか使えないのか、とことん確かめたことのある人は本当に少ない。しかし逆に言うと、いま日本で戦略理論をうまく使う人は、予想外の効果をあげることができる。分厚い本に書いてある複雑にこね回した理論を考える必要はない。単純な基礎的セオリーを完全にマスターし、それを自分の判断やプランニングに忠実に使えば、時としてめざましい効果をあげることができる。
いつの時代も「優れた戦略」は「優れたリーダーシップ」と結びついてこそ、初めて大きな効果を生む。問われるのは、あなた自身の実戦性、つまり戦場で「理論」と「実行」を結合できるかである。
会社の大小にかかわらず、攻めの経営をするときのもっとも貴重な経営資源の一つは、しばしば経営トップの時間である。自分の仕事の優先順位(プライオリティ)をはっきりさせる必要がある。
アメリカのベンチャー・キャピタリストがリスクの高い投資をする時は、その事業の粗利益率を非常に気にする。粗利益率の低い事業は、働いても働いても、利益が出にくい。粗利益が低い原因は一つしかない。コストに比べて、十分に高い価格がつけられていないからだ。なぜ価格を高くつけられないかと言えば、単純な話で、お客の認めてくれる価値がそれだけしかないからだ。そんな事業は、コストを画期的に下げられる見通しがない限り、構造的に魅力のない事業である可能性が高い。だから、なけなしの経営資源を粗利益率の低いプロジェクトに注ぎ込んでしまうのは、絶対に要注意なのである。
まずはオーソドックスに現状分析から始めなければならない。「業績」→「市場の規模・成長率」→「競合」→「当社の強み・弱み」
少なくとも、製品戦略をたてる時に考えなければならない競争のメカニズムは、製品がたとえメディカル関係であろうが、あるいはチョコレートや化粧品のような一般消費者向けの商品であろうが、基本的には同じである。
競争相手の存在を忘れるなと言えば、そんなことは当たり前だと思うだろうが、実際にいつも競争相手のことを考えながら仕事をしている人々は、驚くほど少ない。だからこそ、戦略的に動く人が事業を伸ばすことができるのだ。
プロダクト・ライフサイクルのセオリーから言えば、市場がいま成長期の前半にあるかぎり、競合関係は安定していない。マーケットシェアは依然として流動的である。
革新的な新製品は、プロダクト・ライフサイクルの新しいカーブの上を、先頭を切って走り出す。うまくゆけば既存製品を急速に陳腐化させ、「ご破算で願いましては・・・・」と、現在の市場地図を新たに書き直させてくれるかもしれない。しかし、シェアをひっくり返すのに要するエネルギーは、この先、時間がたつほど増えていく。だから急がなければならない。プロダクト・ライフサイクルのセオリーからは、こんな読みが可能である。
新しくベンチャーに投資をする時の判断の決め手は、次のようなものである。
 (1)まず第一に、その会社の経営陣。社長は人材として一流か。異なった分野の人々がうまく組合わさっているか。彼らの過去の実績は。
 (2)やろうとしている事業が成長分野かどうか(市場が伸びない分野で新企業が成功するのは至難)。
 (3)その市場の中でユニークさがあるか(競合に勝てるのか)。
この議論は、ベンチャー経営のように事業リスクが濃縮された環境では、経営トップの「戦略意識」が成功を勝ちとるための絶対不可欠な要素であることを示している。
戦略的な観点からは、その会社が世の中の競合に比べて、いい勝負をしているのかどうかがカギである。競争とは相対的なものだからだ。
今日の経営戦略論の多くは、プロダクト・ライフサイクルの考え方を包含しているか、暗にそれを前提にしていることが多い。なぜそれが重要かといえば、事業や製品がプロダクト・ライフサイクルの段階を進むにつれて、市場での競争の形態が変化していき、そこで競合に打ち勝つカギも移行していくからだ。
成長戦略のポイントは、「絞り」と「集中」だ。どんな小さな市場セグメントでもよいから、ナンバーワンになることである。そしてそれがある程度進んだら、再投資のサイクルを確立しなければならない。再投資サイクルを効果的に回すためにも、「絞り」と「集中」が不可欠だ。
事業戦略の問題点を解いていく時には、初めから大上段に構えず、何か一つ、おかしいと引っかかった問題からスタートして、なぜ、なぜ、なぜとチェックを拡げていくのが一番効率がよい。
価格問題には、売り手、買い手、競合の三者の思惑が正直に凝集して現われる。
価格は相手が受けるメリットで決まるものだ。こちらのコストではない。コスト一円でも、相手にメリットがあれば一万円でも売れる。コスト一万円でも、相手にメリットがなければ一円でも引き取ってくれない。価格決めは、顧客のロジックを読むゲームである。
相手が900なら、そこからさらにターゲットを絞り、個別撃破のマーケティングができる。
ユーザーの障壁が高い場合、一度中に入ると立場が逆になる。
組立てる戦略のすべての「時間軸」が、予想される競争相手の出現によって否応なしに制約されることになる。
計画を立て、その実行のために泥沼を歩き、しかしいつも夢を忘れず、間違いがあればその場で修正しながら、押したり引いたりして計画を実現していく、それがあなたに与えられた役割である。
計画が計画通りいかないのは常である。大切なことは、当初組み立てた成功のシナリオのどこが崩れてきたかを早く発見することである。たとえ事業がある程度の成功を収めつつあっても、当初のシナリオとの乖離をシビアに検討することが、あなたの当初の判断の間違いを検証し、そこで「失敗の疑似体験」をすることになる。
「失敗のシナリオ」を描くということも有効な手法である。この事業が失敗するとすれば、どういう筋書きでドロ沼に落ちていくか。その場合、どのような逃げの手がありうるのか。これは見えない因果律を読みとろうとする訓練なのである。
プランニングは将来のことを考えるのだから、すべてのリスクを読み切ることは絶対にできない。つまり、誰もが常に失敗する可能性を抱えている。しかし、将来のリスクをできるだけ予測し、成功の確立を上げる工夫はできる。たとえ現実がそのシナリオ通りにいかなくとも、プランニングによって我々のカンはさらに磨かれ、事業はよりよい戦略へと導かれていくのだ。
目標達成ができる、できないの議論はやめて、できるためには何をすればよいかを考えて欲しい。
自分たちが売ろうとしているのは本当に○○だろうか。実は△△ではないのか。そう割り切れば、違った売り方も考えられるのではないか。当事者としてどっぷりつかってしまうと、既成概念にとらわれる。
問題の根元
 (1)営業の「リーダーシップ」が足りない。
 (2)販売の「目標」がはっきりしない。
 (3)営業の活動に「絞り」がない。
 (4)製品の良さを説明するための「道具」が足りない。
 (5)代理店まかせで「顧客」がつかめていない。
 (6)こんな状況でずっときたから何をやるにも「自信」がない。
企業の経営改善には「戦略」が必要だ。そして、これを実行に移すための具体的「プログラム」が必要だ。社内の誰もが理解できる「単純な目標」と、その実現を支援してやるための一連の「プログラム」を打ち出すことによって、「目標と現実のギャップ」に橋がかかる。
本当の人材は最前線の修羅場を通り抜けなければ育たない。
同じことを問い続ける。「それで勝てるか」「それで勝てるか」「それで勝てるか」
皆が燃えていた。仕事に熱中し、それが全く苦痛ではなかった。七転八倒しながら、「考える集団」になろうとしていた。
「提案書」は、メリットを文書化し提出する。ユーザー組織の中で説明が「一人歩き」しても大丈夫なように、分かりやすく文書化する。
企業戦略を立てていく過程は、かなり論理的、分析的に詰めていく作業である。だから、そうした分析が得意な人は、たとえ実務経験の少ない人でも、十分この分野で活躍することができる。
成功する戦略は、会社の体力を考えてまず「戦いの場」を絞ること、そしてそこに、社内のエネルギーを「集中」させていく。
「実績によるプランニング」、つまり過去の実績や経験に基づいて将来の売上予測を立てるのは、「勝者の論理」である。それなのに、負けている者が過去と同じ発想で将来の予測を立てたところで、大した変化を引き起こすことができないのは明らかではないか。そこでもう一つのやり方が必要になる。「目標先行のプランニング」だ。まず先に目標を設定する。とりあえず、それが実現可能か不可能かを横に置いて、「これぐらいやらないとまずい」という数字を先に出してしまうやり方だ。
打ち出された目標と組織の力量にはギャップがある。そういう目標の出し方をしたのだから当たり前だ。そのギャップを埋めるための新しい戦略を開発することが「目標先行のプランニング」のいちばん大切なところだ。目標の数字を出すことよりも、その方がそもそもの目的だったのだとさえ断言できる。そして出てきた戦略がそれで行けると思えば、目標をそのまま確定する。戦略の切れ味が悪そうだと思えば、さらに強力な戦略を考案するよう仕向けるか、もし時間がなくなればその時点で目標を下げて、行動を開始するかのどちらかだ。
「目標先行のプランニング」を成功させるためには、指揮官であるあなたは、新しい戦略を考え出す作業手順をマスターしていなければならない。作業のステップごとに、どんな選択肢があるのかきちんとチェックし、責任者として自分でそれを詰めていく「緻密さ」を持っていること。
良い戦略は極めて単純明快である。逆に、時間をかけ複雑な説明をしないと理解してもらえない戦略は、だいたい悪い戦略である。悪いという意味は、やっても効果が出ないという意味である。
戦略理論の中に市場の「セグメンテーション」というのがある。それを営業活動の計画づくりに応用すると効果的である。製品の売り込みに敏感に反応してくれそうな顧客と、それほどでもない顧客に分類する。何に注目してユーザーを分類するかで市場のマップが変ってくる。
企業戦略の中で、セグメンテーションほど創造性を求められるものは他にない。競合企業の気づかぬうちに、新しいセグメンテーションを創り出す企業が、勝ちを収める。しかし、市場をただ分割すればよいというのではない。セグメントする基準(セグメンテーション要素)は、戦略目的に「完璧に」合致していないといけない。そうでないセグメンテーションは使い物にならないか、またはそれを本当に実行に移せば、貴重な時間や経営資源を浪費するという実害を生む。創り出したセグメンテーションが戦略に合致し、内容が単純明快であればあるほど、それは強力な武器になる。
顧客をグループ分けして、攻撃の優先順位を示す。獲得の望みの低い客とか、獲得してもこちらのメリットの低い客は後回しにするよう分離する。
うまくできたセグメンテーションは、客になってくれそうな人々がどこにいるかを示すだけではない。それは、客になってくれそうもない人々がどこにいるかも示してくれるのである。時間的プレッシャーの下で戦略展開をする時には、それは営業マンが近づいてはならないセグメントになるのだ。
... 三枝匡 『戦略プロフェッショナル』 より

【目次】
プロローグ 日本企業の泣きどころ
 1 飛び立つ決意
 2 パラシュート降下
 3 決断と行動の時
 4 飛躍への妙案
 5 本陣を直撃せよ
 6 戦いに勝つ
エピローグ 30代のチャレンジ

 
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孫子の兵法 - ライバルに勝つ知恵と戦略  ←[Amazon レビュー]


守屋洋(知的生きかた文庫)
★★★★ 【初級】
価格:¥520
 今から2500年も昔、中国春秋時代の戦乱の中、知恵と経験を積み重ねた兵法書「孫子」は書かれました。当時の日本は、まだ弥生時代前期というから驚きです。そして、これだけの時を経てなお、未だにその有用性を失っていないことに、またまた驚かされます。現代の市場競争の中で生き残るための金言・至言がちりばめられているといえるでしょう。

 三国志の英雄・曹操は、自ら孫子の注釈書をつくり部下の教育に使ったとされ、あのナポレオンも孫子を座右の書としていたとか・・・。日本でも武田信玄の旗印「風林火山」は孫子「軍争編」から取ったことは有名です。ちなみに、2007年のNHK大河ドラマ風林火山の中でも、軍師・山本勘助は孫子の一節『兵は詭道なり』を繰り返していました。
 その「孫子の兵法」を、中国古典の大家・守屋洋が平易に解説してくれます。

【抜き書きノート】 ... 守屋洋 『孫子の兵法』 より
彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず。彼を知らずして己を知るは一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に殆うし。
善く戦う者は人を致して人に致されず。
勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む。
其の疾きこと風の如く、其の徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如し。
... 守屋洋 『孫子の兵法』 より

【目次】
1 始計篇
2 作戦篇
3 謀攻篇
4 軍形篇
5 兵勢篇
6 虚実篇
7 軍争篇
8 九変篇
9 行軍篇
10 地形篇
11 九地篇
12 火攻篇
13 用間篇

 
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