【抜き書きノート】
... 中村天風 『運命を拓く』 より
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何れにもせよ、厳かに考えなければならないのは、人生を有意義に生きる為には、何を措いても、常に、自分の理想を、階級の高い気高さで、自分の心の中に抱かなければいけない。宇宙本体の力は、人間の心の状態を鋳型として、これを現実化さす自然現象を現すのだ。だから、健康に対しても、運命に対しても、その理想が確実な姿で、階級の高い気高さを以って、描かれて居なければいけないのだ。その通りに、宇宙本体は、現実に造り出そうとする、自然傾向があるんだから・・・・。理想はその人を偉大にも、将また、極めて価値なくもする原動力を持っている。
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自分の人生を、気高い内容と、価値の高い標準で持つ人は、もう、その理想が現実になる前から、現実になったと同じような、人生境涯で、活きているのと同様である。
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考えてみなさい。宇宙を司る宇宙本体の力が、吾々の心の取る態度と、全く同じ態度でもって、吾々に臨むという事実、この、何遍も言っている此の事実、これは峻厳なる事実なのである。
「人間は万物の霊長だから、健康的にも、運命的にも、終始、豊かな、感謝する生活が、出来るように作られているんだ」・・・・と。
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心の生活を豊かにするには、勿論、心で思ったり、考えたりすることが、功利的なものであってはいけない。終始宇宙本体と同じように、真善美であらしめると同時に、理想もまた、終始、気高いものを心に描いていなければならない。
そして、宇宙を司る宇宙本体から、尊い力を、吾が生命に受け入れる用意を、始終、疎かにしないようにしなけりゃ・・・・。
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理想を気高いものにしようとするのには、第一に必要なことは、「吾というものが宇宙本体と常に一体である」ということを信念しなけりゃいけない。信念しなけりゃ・・・・。ただ思っただけではいけないのだ。
言い換えると、見えざる”力”との結合を決して忘れてはいけない。すぐ孤独になるからいけないんだ。
川の流れは水源があった為だ。水源の無い川はあり得ないのだ。吾々の存在は吾々の命の持つ源がこれを保っている。その源が宇宙本体である。その宇宙本体と常に結ばれている自己を、明瞭に意識して活きると活きないとでは、どれだけ人生に活きる場合の結果に、大きな差が出来るかわからない。
だから、理想は、つねに気高く、本当に、価値の高いもので、あらしめなければならない。
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一番手っ取り早いのは、何かしら諸君が、不都合を感じたり、不満を感じる場合があるならば、そういう方面からそれを考えないで、それが完全に成った成就した姿を、自分の心に描きなさい。
ああ成ったらいいなあ、こう成ったらいいなあ・・・・という念願だけを、心に炎と燃やさないで、ああ成ったらいいなあというものが、もう、既に、成就した気持ちや、姿を、自分の心に描くのだ。
成りたいなあ・・・・という気持よりも、成っている姿を。心に描いた時に、現実から程遠い事でも、もう、霊の世界では、それが、本当に成っているのと同じことになるのである。
だから、理想の中に描く絵は、もう、確実に、現実化したものであらしめなければいけない。
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だから、常に、自分の理想は、現実のものと同じように、ハッキリと明瞭に、自分の心に描きなさい。そして、その描いた絵は、決して、それを、取り替えないようにしなければ・・・・。昨日と今日とでは、全く、形が変ったものにしたんではいけない。
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要するに、こうした事実を考えると、自己の想像作用を、正確に、そして、適当に使うことが巧妙になればなるほど、理想も高級となり、自己の人生を、非常な、値打のある、高い階級にする。
これは、決して、神秘でも、不思議でも、奇跡でもない。人類の生命本来の作用は、絶え間なく、永遠に、延びよう、広がろう、向上しようとする様に、宇宙本体の意図のもとに作られた。
これが、厳として、動かすべからざる宇宙法則なのだ。
だから、考えてみれば、健康になるのも、幸運の持主になるのも、わけの無いことであると同時に、なんと、それが、人間としての当然の、与えられた、感謝すべき権利であるということがわかる。
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常に、自分というものが、こうやって、生きて居る事を感謝する事が、いちばん大切なんだよ。
「私は今正に喜びと感謝に満たされている」
そうすると、現在、病であることも、不運であることも、感謝で考えなければいけないことになる。
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心の態度は飽くまで積極的であらねばならぬと同時に、如何なる事情があろうとも、自分の描いた理想は、一念不動の状態で、固く固く把持して、一寸一寸と変更しないことである。
否!この事くらい、人生を幸福にする原則の中で必要な原則は他に無いのである。
だから、今まで屡々言って来た通り、吾々は、まず第一に、ハッキリと明瞭に自己の欲する物事を決定することである。
そして第二には、一旦決定した以上は、その決定した事柄を、みだりに変更せぬ事である。
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吾々は常に自己の欲する事物を、積極的な、完備した、而も、チャンと一定した形に描かねばならない。そして、その求むる所のものを心に描き終わったならば、それを固く固く心に守って、どんな事があっても、決して変更させたり動揺させたりしてはならない。
同時に、特に特に必要な事柄は、それも確実に自分のものにする事が出来得るという「信念」を堅固にして、忽せにしない事である。
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もっと突っ込んで言えば、折ある毎に、自分の希望する処求むる処のものを
「実現する!実現する!」
と自己自身繰返していう時に、あなたがたは、既に、その求むる処のものを、半ば以上、自分の物にしたのと同様の道筋に入ったのである。
そして、その後は、ひたすらに信念を堅固にして、これを繰り返して居ると、宇宙霊は、自動的に、自然的の経路で、その求むる事を実現して来るのである。
と言うのは、最初に、信念強く、その希望が「実現する!」と断定した時には、既に有体の事をいうと、その事柄は、霊の世界に於ては、最早実在となって居るからである。
... 中村天風 『運命を拓く』 より